2023-24 WEリーグ第22節

2024.5.25

サンフレッチェ広島レジーナ

上野 真実 (77')

1

AWAY

FULL TIME

0

0-0

1-0

セレッソ大阪ヤンマーレディース

エディオンピースウイング広島

6,305

ギャラリー

MATCH REVIEW

WEリーグ参入1年目が終了。最終節は敗れ、9位で全日程を終える
 
WEリーグ参入1年目の最終節。セレッソ大阪ヤンマーレディースは、サンフレッチェ広島レジーナのホームに乗り込み、WEリーグ第22節に挑んだ。先発は前節から2人変更。中西ふうに代わって浅山茉緩が右ウィングバックに、白垣うのに代わって筒井梨香が3バックの真ん中に入った。
 
立ち上がり、ホームの大声援も背に攻撃を仕掛けてきたS広島Rだが、セレッソもここをしのぐと、慌てずボールをつなぎ、局面を打開していく。11分、14分と左ウィングバックの百濃実結香がサイドを縦に仕掛けてチャンスを伺う。「ここ何試合か自分の持ち味を出せて自信もあったので、今日も積極的に仕掛けることができた」と試合後に振り返った百濃だが、18分には決定機を演出。筒井のフィードを受けて縦に切れ込むと、相手のマークを外してマイナスにクロス。飛び込んだ高和芹夏が左足でうまく合わせたが、シュートは枠を捉え切れず、絶好のチャンスを逃した。20分にも宮本光梨、脇阪麗奈、高和とテンポ良くつなぎ、矢形海優のクロスに脇阪が入って得点になりそうなシーンを作った。前半の中盤、この時間帯はセレッソがボール支配でS広島Rを上回り、押し込んでいく。飲水タイム明けは再びS広島Rにボールを握られる時間もあったが、守備時は4-4-2で対応するセレッソも穴を空けず、チャンスは作らせない。一度だけ、32分に自陣右サイドの背後を取られて決定機も与えたが、ここは相手のシュートがクロスバーを越えて事なきを得た。前半は互角以上の内容を披露したセレッソ。立ち上がりから圧倒されて失点した前回対戦時からの成長はしっかりと刻んでみせた。
 
攻守に「プラン通りに試合を運べた」(鳥居塚伸人監督)前半だったが、一転して、後半は守勢に回る時間が続く。ただし、ここで立ちはだかったのがGK山下莉奈。今季は全試合フル出場を達成し、セーブ、ハイボール処理とも1シーズンを通して高い数字を残し続けたが、その集大成となる最終節で好パフォーマンスを披露した。それでも試合の流れは相手に傾いたまま。後半は自陣左サイドの背後を取られるシーンが増える中、筒井の好カバーなどもあり何とか失点は防いでいたが、77分、ついに先制を許してしまう。交代で入ってきた、かつてセレッソでもプレーしていた李誠雅のクロスに中央で上野真実にボレーを決められた。ここから反撃のスイッチを入れたいところだったが、後半に放ったシュートはわずかに1本。後半は相手のペースに終始し、0-1で敗れた。「自分たちの課題は後半の戦い方で、それは1年を通して課題になった」と振り返った脇阪。相手が選手交代も含めて変化を付けてきたり、自分たちのフィジカルが落ちてきた時間帯で押し込まれて失点するケースはシーズンを通して目立った。前半は相手の間を取りながらテンポ良く回していた攻撃も、後半は「ボールを持つことを怖がって、ボールを放してしまうシーンが増えた」と鳥居塚監督。チームとしてやるべきことを最後まで徹底する練度や交代選手も含めた選手層の厚さなど、現状のセレッソに足りない部分を見せ付けられた一戦となった。
 
WEリーグ参入1年目の全日程を終えたセレッソ大阪ヤンマーレディース。最終的な結果は6勝3分13敗の勝点21で9位。目標に掲げていた5位とは、『10』の勝点差が開く結果となった。もっとも、「戦えている部分は十分ある。個々のレベルの差はそこまでないと思う。順位はもっと上げられるという手応えも感じた」と筒井が話したように、“3強”を含めた上位陣に対しても、全く歯が立たないわけではなかった。どの相手とも2度目の対戦の方がほぼ好内容を示していたように、シーズンを戦いながら成長も続けてきた。WEリーグ参入2年目となる来シーズン、「技術、戦術、メンタル、フィジカルを一つ一つ見つめ直して」(鳥居塚監督)『10』の差を埋めていく戦いが始まる。

監督コメント

■鳥居塚伸人監督
「1年間を戦ってきて、最終戦を勝利で終わろうという形で臨んだゲームでしたが、前半はプラン通りにうまく試合を運べましたが、後半に関してはパワーが足りなかった。この1年戦ってきて、今の力を思い知らされたゲームだったと思います。これを糧に、選手はまた来シーズン頑張ってくれればいいのかなと思うので、いい経験ができたと思います」
 
Q:広島のサイド攻撃が強みということは理解した上で臨んだ試合ですが、そうした中でもやられてしまうのは、選手個々の力の問題か、チームとしての戦い方の問題か?
「WEリーグを1年間、戦ってきた中で、WEリーグの強度にはまだまだレベルが足りていない。徐々に距離が遠くなってきて、やられるシーンが増えてきたのが現状です。技術なのか、戦術なのか、メンタルなのか、フィジカルなのか。一から見直してやらないと、勝てるリーグではなかったと。それは選手自身も感じたと思いますし、僕自身も反省点だと感じています」
 
Q:交代選手も含めて終盤にパワーが足らない現状は、一朝一夕には解決しないと思うが、来季へ向けて、改めてどのあたりを伸ばしていきたい?
「選手は一生懸命、プレーしてくれました。今日のゲームも必死になって戦ってくれました。ただ、このリーグで勝つために、本気で勝ちたい選手が何人ピッチに立っていたのか。そこを見つめ直さないと、簡単には勝ちを与えてくれないリーグです。自分に負けたシーンが何シーンも見られました。本気でこのリーグで戦って、勝ちを重ねることに選手が向いていかないと、勝ち星は増えていかないのかなと思います。そういう部分を選手が見つめ直し、来季に向かってくれたらいいのかなと思います」
 
Q:ここ数試合は3バックを採用していたが、今日は4バックでした。その意図は?
「広島さんが幅をしっかり使ってサッカーをしてくる中で、3バックで対応した場合、ワイドの選手が引かざるを得なくなる。ウチのサッカーとしては、前からプレッシャーをかけていきたいと。そうなると、4バックでしっかり捕まえた方が、前線からプレッシャーはかけられる。ボールの動かし方については、可変しながら間を取りながら、ボールを動かそうと臨んだのですが、やっぱり(相手はWEリーグ)3年目ということで、選手が修正して後半に対応された。逆にウチは、ボールを持つことを怖がって、ボールを放してしまうシーンが増えた。そこも課題です。4バックにしたことで、選手の判断も今後の課題になりました。このゲームに関しては、3バックより4バックが嵌ると思って、システムを変えて臨みました」
 
Q:リーグ戦全試合フル出場した脇阪麗奈選手の評価は?
「このチームが立ち上がった後から合流してもらって、キャプテンとしてチームを引っ張ってくれました。言動、行動の全てにおいて、プロとはこう、という形で示してくれました。ピッチの中でも、今日は足も攣っていましたが、最後まで勝ちにこだわって戦った選手です。ああいう選手を一人でも多く作れるように努力していきたいと思います。勝たせられなかったことは、僕自身、申し訳ないという気持ちでいっぱいですが、脇阪自身は今シーズン、一生懸命に戦ってくれたと思います」

選手コメント

■脇阪麗奈選手
Q:目標にされていた年間フル出場を達成されました。
「1年間パワーを使ったし、自分を少しは褒めてあげたいという気持ちです(笑)」
 
Q:途中、足をつる場面もありましたが、最後まで戦い抜く意志は強かった?
「ちょっとつっても行けるタイプなので、行けるところまで行こうと思い、最後まで走ったのですが、結果は負けてしまったので、少し残念な気持ちです」
 
Q:前半はうまくボールを運んでフィニッシュまで行けたり、自分たちの時間帯もあったが、後半は差が見えてしまった印象だが?
「やっぱり自分たちの課題は後半の戦い方で、それは1年間を通して課題になりました。試合運びのゲームプランなど、もっとチームで共有していけたら、もったいない試合は減ると思います。戦えている試合を、どう引き分けや勝ちに持っていけるか。負けにしないように、チーム全体でしっかり考えて、個人、個人の戦術理解のレベルも上げていかないと、このリーグでは勝てない。状況によってプレーを変えることも必要ですし、自分ももっと伝えないといけない。今の力がこの順位だと思うので、1年間を通して学んだことを、来シーズンは必ず成長につなげていきたいです」
 
 
■筒井梨香選手
Q:個人のパフォーマンスとしては、しっかり出せていたと思うが、この試合を振り返ると?
「出せた部分もありますが、失点してしまったので、反省は残ります。後半になって自分たちで崩れてしまった。前半のようにつないでいれば良かったのですが、急に蹴り出したので。ディフェンスラインの深いところで蹴って、相手に跳ね返されて、中盤で回収されて、ラインを上げ切れずに追い込まれる。失点シーンが典型でした。その中でも、自分がディフェンスリーダーとして、ディフェンスラインを統率しないといけなかったのですが、統率し切れなかった。決められた上野選手は自分のマークだったのですが、戻ってきている仲間にアイコンタクト気味に受け渡してしまって、そこをやられてしまったので、そこのコミュニケーションをもっと丁寧にやっていたら失点はなかったとも思いました」
 
Q:後半は少しバタついてしまった?
「自分は心の余裕を持つようにしていますが、ディフェンスラインの選手たちをもっと鼓舞したり、もっと声をかけてあげていれば良かったなと感じています。ディフェンスリーダーとしては、まだまだかなと感じました」
 
Q:李誠雅選手とのマッチアップはいかがでしたか?
「楽しかったですね(笑)。セレッソにいた時よりうまくなっているし、成長している。自分も成長していると思うので、いい戦いができたと思います」
 
Q:セレッソとしては1年目のWEリーグでしたが、結果をどう振り返りますか?
「自分自身、半分ぐらい試合に出られていないので。ケガにも苦しめられましたが、まずそこは自分の反省点です。出ていた試合でも、今日みたいに勝ち切れなかったり、無失点で終われなかった試合もありました。一番、重要な部分が欠けていた。でも戦えている部分は十分あるので、個々のレベルの差はそこまでないと思う。順位はもっと上げられるという手応えも感じました。今年は5位というチームの目標でしたが、もっと徹底して戦えていれば、5位も夢じゃなかったと思います」
 
 
■山下莉奈選手
Q:WEリーグの1年目が終わりました。全試合フル出場という結果を残したが、自身ではどう振り返りますか?
「大きなケガをせずできたことは良かったですが、失点は多かったので。振り返れば、もっと防げた失点もあります。もっと失点数は減らしていかないといけないと思います」
 
Q:今節に関しては、かなりのシーンを防ぎました。自分自身としては、やってきたことを最終節でしっかり出せた思いもあるのでは?
「今日に関しては、出せる力は出せたんじゃないかなとは思います。ただ、最後の失点も防ぎたかったですね。後半は少しバラけたり、失点後もバタつきがあった。(ボールを)失うのも、自分たちのミスからばっかりでした。そこで失うか、失わないかが勝敗にも関わってくる。ラストの時間帯になっても、自分たちらしいサッカーを最後までやっていかないといけないと思いました」
 
Q:今季1年プレーした中で、自身の課題と思うことは?
「守備範囲がまだ固定できていない部分があります。行ける時と行けない時があるので、そこをもっと安定していかないと、連係も取りにくいと思います。来シーズンはもっと安定したプレーをしていきたいです」
 

■百濃実結香選手
Q:今シーズンの最終節でしたが、試合を振り返ると?
「レジーナとの4試合の中で、一番、攻撃はできました。自分たちでボールを持つ時間は一番長かったですし、決定機もあったので決めたかったのと、耐えておけば、というシーンでの失点だったので(悔いが残る)。自分たちは決め切れず、相手は決め切って負ける試合が1年を通して多いとは感じていたので、今日もそういう感じになってしまったのが残念だったと思います」
 
Q:前半の決定機を作った場面も含め、ボールを持ちながら崩すシーンもありました。1年の成長を示せた部分もあったのでは?
「そうですね。最後の何試合かになるのですが、自分の持ち味を出せて自信もあったので、今日も積極的に仕掛けることができました。今までの3試合のレジーナ戦は、自分があまりボールに触れなかったり、ドリブルができないシーンが多かったので、今までのレジーナとの対戦を考えると、自分の特長は一番出せた試合だったのかなと思います」
 
Q:来シーズンへ向けて、伸ばしていきたいところは?
「クロスの質をもっと上げたり、自分でシュートに行く機会を増やしたり、質を上げること、積極性を出していくことは、来シーズンに向けて自分の課題です。ドリブルとクロスとシュート、色んな選択肢がある怖い選手にならないといけないと思います」
 
Q:WEリーグの中でどう自分のスタイルを築くか、という部分では、もがいた時期も含め、収穫は大きかった1年になったのでは?
「大きかったですね。凄く苦しかった時期もあったのですが、それを乗り越えて、何試合かは自分の特長は出せたので。もっと早く抜け出せたら、もっとチームの力になれたと思います。今季はうまくいかない中でも最後に抜け出せたことは良かった。通用したところ、通用しなかったところは直して、来シーズンに向けて頑張りたいです。もっとしっかり自分を分析したり、監督とも話して相手のウィークを突き詰めて、もっと自分の特長を出せたらいいと思います」
 
Q:試合後に号泣しているシーンがDAZNでも映っていたが?
「最後に留衣さんに出場してもらうことができなかったことが…(涙)。もちろん、負けたことも悔しかったですが、私たちがプロリーグで戦えているのも、古澤さんたち1期生がずっとレディースを引っ張って支えてくれたから。WEリーグに入るために(パートナー企業へ)挨拶にも行ってくれたり、そういうことも含めて1期生の存在は大きかったので、最後にピッチに立たせてあげたかったという気持ちが強くて…(涙)。負けて悔しいし、留衣さんに向けて申し訳ない気持ちが大きかったです」