天皇杯JFA全日本サッカー選手権大会
3回戦

2017.7.12

アルビレックス新潟

平松 宗(24')ホニ(95')

2

AWAY

FULL TIME

3

1-0

0-1

1-1

0-1

セレッソ大阪

山口 蛍(50')リカルド サントス(96')木本 恭生(113')

デンカビッグスワンスタジアム

NaN

レポート

2度のビハインドを跳ね返したセレッソ。チーム一丸で“ビッグスワンの死闘”を制し、4回戦に駒を進めた

J1リーグ、JリーグYBCルヴァンカップとともに、もう一つのタイトルを目指す戦い。天皇杯の3回戦に挑んだセレッソ大阪。対戦相手は、カップ戦、リーグ戦に続いて今季3度目の対戦となるアルビレックス新潟。敵地に乗り込んで迎えたこの試合、セレッソは、直近のリーグ第18節の柏レイソル戦から、山口蛍と山村和也を除く先発9人を入れ替えた。一方の新潟は、直近のリーグ第18節の浦和レッズ戦と先発8人が同じ。浦和戦は出場停止だったホニも戻り、いわゆる“ベストメンバー”をぶつけてきた。

序盤、セレッソは山村にボールを入れて攻めるも、10分、ホニが左サイドからカットイン。新潟のキーマンにドリブルからのシュートを許すと、ここから試合は新潟ペースで進む。14分、チアゴ ガリャルドのスルーパスからピンチを迎えるも、田中裕介がブロック。17分、今度は堀米悠斗のパスからホニが裏に抜ける。マークについた木本恭生がバランスを崩してヒヤリとするも、何とか対応した。21分には、新潟に高い位置で奪われると、チアゴ ガリャルドにシュートまで持って行かれるも、茂庭照幸がブロック。こぼれ球を再びチアゴ ガリャルドが放ったシュートは決定的な一撃だったが、ここは丹野研太が好セーブで難を逃れた。ホニとチアゴ ガリャルドを中心とした新潟の攻撃に防戦一方のセレッソは、24分、ついに先制点を許してしまう。ホニが“裏街道”でドリブル突破を図ると、たまらず酒本憲幸が倒してFKを与える。すると、このFKから、試合前のアップ中に負傷した山崎亮平に代わって急きょ先発した平松宗にヘディングを決められた。その後も耐える展開が続いたセレッソ。44分、福満隆貴が抜け出して放ったシュートが前半、唯一のチャンスだった。

「みんなの戦う気持ちが見えない。責任感を持って、積極的にプレーしよう」。尹晶煥監のゲキを受けてスタートした後半。セレッソは開始早々、田中の攻め上がりからCKを獲得すると、関口のキックに田中がペナルティーエリア内で相手のファウルを受けてPKを獲得。これを山口が落ち着いて決め、セレッソが同点に追いついた。直後の52分には関口のクロスに澤上竜二が飛び込み、チャンス。このままセレッソが後半は流れを掌握するかに思われたが、60分過ぎからはペースは再び新潟へ。63分、この試合、再三、鋭いスルーパスを通していたチアゴ ガリャルドから矢野貴章へパスが通るも、ここは酒本と茂庭が体を張ってしのいだ。浦和戦から中2日にも関わらず運動量が落ちない新潟に劣勢を余儀なくされたセレッソ。70分前後、尹晶煥監は山村を3バックの一角に落とし、守備を安定させてカウンターを狙う戦術に切り替えた。尹晶煥監は、64分には澤上に代えてリカルド サントスを投入。72分には、酒本に代えて丸橋祐介をピッチに送り、田中を右へ移し、丸橋を左へ入れた。ここから試合は一進一退の展開。守備では、木本が、茂庭が体を張って防ぐ。攻撃では、1トップのリカルド サントスを裏へ走らせる形を多用。77分、関口のパスに抜け出したリカルド サントスが相手DFのイエローカードを誘発すると、86分には田中のパスに抜け出し、ビッグチャンスを迎えるも、シュートはDFに防がれた。83分には、足をつった山村に代わって藤本康太がピッチに入るなど、セレッソは交代枠を使い切った中、1-1で90分が終了。勝負は延長戦に持ち越された。

すると、95分。チアゴ ガリャルドのスルーパスに対応した藤本と丹野に痛恨の連係ミス。藤本がクリアできずにGKに処理を任せようと時間をかけた隙を突かれ、最後はホニに押し込まれた。そんなミスから失点した嫌な空気を振り払ったのが、リカルド サントスだった。失点から1分後。丸橋のクロスに打点の高い強烈なヘディングを叩き込み、すぐさま同点に持ち込んだ。延長前半の残りの時間は新潟に2つの決定機が訪れるも、いずれも丹野が防いだ。延長後半に入り、最初のビッグチャンスも新潟。チアゴ ガリャルドのスルーパスに鈴木武蔵が抜け出しGKと1対1となるも、間合いを詰めた丹野に対し、鈴木のシュートは枠を外れた。110分には、セレッソに決定機。山口のサイドチェンジを受けた木本が丸橋とのワンツーからシュート。GKを弾いたところを福満が詰めてネットを揺らした。ただし、ここは福満がオフサイドの判定でノーゴール。それでも3分後、再び木本が左サイドの高い位置でボールを受けると、今度はリカルド サントスとのワンツーからペナルティーエリア内に進入。見事なシュートを突き刺して、この試合、初めてセレッソがリードを奪うと、その後はきっちりと時間を使い、試合を終わらせた。

新潟に主導権を奪われ、シュート数、決定機の数では劣ったセレッソだが、DF陣の懸命のブロックに加え、GK丹野は随所に好セーブを披露。そんな守備の踏ん張りに応えるかのように、途中出場のリカルド サントスと丸橋が攻撃で勢いを与えた。そして、決勝点は3バックの一角に入っていた木本。2度のビハインドを跳ね返し、まさにチーム全員で掴み取った勝利だった。J1リーグ戦で続いている逆転勝ち。その底力を天皇杯でも発揮したセレッソが、クラブ史に残る“ビッグスワンの死闘”を制し、4回戦進出を決めた。

監督コメント

■尹晶煥監督
「本当にきつい試合でした。新潟さんも、本当にハードなスケジュールの中、粘り強く戦ったと思います。試合内容は、そこまで僕ら、良くはなかったですが、そういった(粘り強い)新潟に勝つために頑張りました。そして、最後の最後まで諦めることなく戦う姿を見せたことに評価したいと思います。遠くまで足を運んで下さったサポーターの皆さんにも、感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。多い人数ではなかったですが、グラウンドまで歓声が響くようにして下さって、本当に感謝しています。なので、僕らの選手たちも頑張れたと思います。今日、勝ったことで、次もまた、もう1試合できることになりました。でも、今日みたいな試合は肉体的にも精神的にも疲れる試合なので、大変です。僕らは試合がすぐに続きます。試合に向けて、よく休んで、よく回復させて、次の試合にいい状態に臨めるように頑張ります」

─2点目と3点目の評価を聞かせて下さい。
「まず、リカ(ルド サントス)が入って、その後、マル(丸橋祐介)が入りました。私たちには、体力のある選手が必要でした。そこから、『体力が残っているマルを使っていこう』という話をしました。マルの質の高いクロスと、リカの精度の高い決定力で、同点に追いつくことができました。3点目ですが、ヤス(木本恭生)の攻撃性が表れたのではないかと思います。本人が本能的に持ち上がることができました。誰かがやってくれたことではなく、本人がしっかりやったことです。皆さんもご存知の通り、まだヤスに運が付いていると思います(笑)そのおかげで、まだ私たちは負けることなく、勝ち続けていると思います」

選手コメント

■木本恭生
─ご自身の決勝点を振り返ると?
「延長戦に入る前から、途中から入ったマルさん(丸橋祐介)の体力が残っているということで、監督からも『左から攻めろ』と言われていたので。自分も高校時代から攻撃も好きだったので、思い切って、リスクを背負っても前に行こうかなと。決める前に、1回、チャンスもあったので。そのイメージが残っていて、(決勝点の場面も)ワンツーでうまく前に行けて、シュートも力を抜けて蹴ることができました。落ち着いて蹴ることができたので、良かったですし、練習の成果が少しは出たのかなと思います(笑)」

─試合全体としては、守備で耐える時間も長かったですか?
「下がり過ぎて相手にプレッシャーをかけることができなかった時間もありましたし、個人的にも、前に足が速い選手(ホニ)がいたので、『カバーすること』と言われていたんですけど、そこを意識していたら、CB(茂庭照幸)との距離が開いたり、逆にカバーできなかったり。自分のCBとしての課題も出ました。ただ、こういう試合で勝てたことは、リーグ戦に出ている選手に対しても力を与えることができたと思うし、自分たちにとっても、1試合増えたということで、これからのモチベーションにもなります」

■リカルド サントス
─自身の得点を振り返ると?
「良かったですね。何が良かったかと言えば、失点した後にすぐに取れたこと。それは大きかったですね。失点の直後に決めたことで、自分たちのモチベーション、やる気のスイッチが入ったと思います。そこから自分たちは逆転できるという自信が沸いて、実際に逆転できました。最後は我慢比べでした。チャンスは来るので、そこまで我慢して、決めた方が勝つと思っていました」

─ルヴァンカップのプレーオフステージ第1戦に続き、打点の高いヘディングでしたが?
「日々の努力だと思います。シーズン前のキャンプから練習していますし、チャンスが来て、それに対して、しっかりと結果を残せているのだと思います。ただ、それは自分だけではなく、チーム全体の調子がいいので、自分のその中に入れているという感じです。まだ公式戦で、2回しか負けていないですしね(笑)」

─決勝点になった、木本恭生選手とのワンツーについては?
「ワンツーからのフィニッシュは練習で日々やっています。そういった、日々、練習で努力していることが試合で出せたことが一番うれしいですね(笑)」

─今日のような試合を勝ち切れた最大の要因をどう考えますか?
「今日だけではなく、最近は逆転勝利が多いんですけど、後半だけで言うと、自分たちが相手より走れているのかな、と思います。暑くて両チームともきついんですけど、自分たちの方が走れていると思います。そういった中で、最後は得点を決め切ることができていると思います」

■山口蛍
─激闘となった試合を振り返ると?
「カップ戦のメンバーはこういう戦いを毎試合してきて、毎試合、全員で戦って、勝ち切ってきたと思います。今日もそういう展開になりました。自分たちはリーグ戦からメンバーを大きく変えて、相手はリーグ戦のままのメンバーでした。やっぱりそこの差は大きいと思うけど、それでもしっかり全員で戦えたことは大きかったと思います。その中で、俺とかマル(丸橋祐介)とか(山村)和也くんは連れてきてもらって、試合にも出たので、流れを崩さないように必死でやりました。それが結果に結びついたことは良かったと思います」

─チームの一体感を感じる勝利でしたが、途中から入ってきた丸橋選手やリカルド選手が力を与えてくれた?
「そうですね。結構、カップ戦は途中から入ってきた選手が流れを変えることも多いので。マルは普段も出ていますが、リカに関しては、普段の練習から常に腐ることなく前向きにやっていて、尊敬できるし、そこは本当にすごいなと思う。それが今は結果に出てきていると思う。カップ戦でも決めているし、そういった姿はいろんな選手が見習わないといけないと思います。そういうところから、今はチームがいい方向に向いているのではないかと思います」

─PKのシーンを振り返ると?逆を突いて冷静に決めましたね。
「普段はあまり蹴ることはないのですが、今日は監督から指示があったので。自分としては、蹴る前に目で駆け引きしていました。(見ていた)逆の方に蹴りました。ちらちら見ていた方にGKは飛んだので、駆け引きがうまくいったのかなと思います。でも、試合前日もPK練習をしっかりしていたので、その成果も出たと思います」

■丸橋祐介
「前半から苦しい時間帯もあったんですが、後半すぐに同点に追いついて、勢いが戻るかなと思ったんですが、うまくいかない状況も多かったです。(そういった状況で)出たからには、流れを変えないといけないと思っていたので、うまく同点のアシストができて良かったです。最後は、みんな走り切って勝てたので、良かったです」

─同点のクロスはピンポイントでしたね?
「リカが中でどっしりと構えてくれたので。ニアの選手を越えれば決めてくれると思っていたので、そこだけに集中して蹴りました」

─3点目は左サイドを崩す形となりましたが?
「ヤス(木本恭生)もいいタイミングで上がってきてくれたし、DFもそこまで付いて来なかったので、うまく崩せて良かったです」

■茂庭照幸
─壮絶な試合を勝ち切りましたね?
「そうですね。もう、本当にきつかったですけど、みんなが魂込めて戦ったので、何とか持ち堪えたし、勝つことができました。でも、新潟うまいですよ!強かったですよ!やっぱりJ1で長く戦っているだけあって、今は最下位ですけど、きっとここから巻き返していくんじゃないですか?僕はそう感じました。僕らも、(リーグ戦とは)だいぶメンバーが変わって、サッカーも違うモノになりましたけど、どんなサッカーをしようと、上に上がることが大事なので。そういった意味では、『やることはやったぜ!』って感じですかね(笑)」

■藤本康太
ヒヤヒヤしましたけど、勝てて良かったです。
復帰してまだ1週間くらいしか経ってないので、コンディションは全然上がっていませんが、そこは入った以上言い訳にはできないし、入ったらやるしかなかったので、後はもうちょっと自分なりにコンディションを上げて、もっともっとチームに貢献できたらなと思います。
120分しんどかったですけど、声を切らすことなくみんな気持ちを入れて頑張っていたので、勝って良かったです。

■丹野研太
チームとして逆転できたのはすごく良かったですし、また今度もしたいと思います。

─延長での失点のシーンは?
コウタ(藤本)が体を入れていたので、コウタに任せるところと自分が出るところのお互いの意思疎通が中途半端になって、相手も早かったですし、がしゃがしゃっとなってしまった。
特に延長戦で本当はミスが許されないシーンだと思うのですが、今日はチームが逆転してくれたから良かったですけど、あのようなミスで取り返しがつかなくなることもあるので、これから先、ルヴァンカップも含めて大事な試合が続くので、生かしていきたいと思います。
相手の主力選手が出てきて、能力の高い選手もいましたし、前半は受けてしまって自分たちの戦いができなかったので、後としては我慢してというのがこちらのリーグ戦以外の戦い方であると思うので、1点失点しましたけど、しっかり耐えて耐えてというのがいつものスタイルなので、そういうシーンが1〜2回試合の中で出てくるので、それを継続していけるようにやりたいです。

─結果的に勝って次に繋がりましたね!
それが一番大事だと思うし、次の試合が増えて、チャンスが増えるので僕たちには良い事なので、1つずつ勝って、タイトルを狙える位置まで行きたいです。

■山村和也
本当にみんなの頑張りで逆転勝利することが出来て良かったです。

─5バックに入ったのはどのタイミング?
1-1になったタイミングで入りました。
1-0で苦しいなか、クニさんがPKを取ってくれて1-1になって、そこから延長は外で見る事になりましたけど、本当に一人一人がしっかりと戦って手にした勝利だと思うので、本当に勝って良かったと思います。

■福満隆貴
最初先制されて、PKで追いついたのですけど、また延長の前半立ち上がりすぐに失点してしまって、本当に苦しい展開が続いていて、本当にみんなでしっかり耐えて、チャンスをしっかりものにできて良かったと思います。
失点した時もそうですけど、失点した時には点を取るしかないので、ミスの確認もしながら攻撃の話もしたりしました。チームの雰囲気がすごく良いので、追いつくチャンスは絶対に来ると思っていたので、それを信じてみんながやった結果、逆転できたので良かったと思います。