天皇杯JFA全日本サッカー選手権大会
ラウンド16(4回戦)

2017.9.20

セレッソ大阪

福満 隆貴 (6')

1

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FULL TIME

0

1-0

0-0

名古屋グランパス

パロマ瑞穂スタジアム

レポート

電光石火の福満の先制点をチーム一丸で守り抜いたセレッソが準々決勝進出を果たす

名古屋グランパスのホーム、パロマ瑞穂スタジアムに乗り込んでの一戦となった天皇杯4回戦。セレッソ大阪は、試合前、「中2日で次のリーグ戦があるので、ルヴァンカップに出ている選手たちを使おうと思っている」と尹晶煥監督が明言した通り、直近のリーグ戦、第26節のサンフレッチェ広島戦から先発11人を総入れ替えして試合に臨んだ。試合開始前から漂い始めた黒い雲が大粒の雨に変わったのは、キックオフのおよそ30分前。視界が遮られるほどの突然の豪雨に、一時、騒然となったスタジアムだが、幸いにも雨は次第に弱まり、試合に影響を及ぼすことはなかった。

開始早々、試合は動いた、6分、相手のパスミスを逃さずに秋山大地が素早くリカルド サントスへ付けると、リカルド サントスはワントラップから優しいパスを福満隆貴へ送る。名古屋DFラインの裏を取って抜け出した福満がGKとの1対1を落ち着いて決め、セレッソが幸先良く先制に成功した。試合前から、名古屋の攻撃をしのいで隙を突くことをゲームプランとしていたセレッソだが、この早い時間帯での先制点により、“攻める名古屋と守ってカウンターのセレッソ”の構図はより鮮明になる。

名古屋のポゼッションの中心にいたのは、昨季まで2年間、桜のユニフォームに袖を通してプレーしていた玉田圭司。随所にさすがのテクニックを見せるも、「(玉田に)チャンスメイクされるのはいいけど、フィニッシャーにさせるのだけはやめようと話していた」と試合後に振り返った茂庭照幸の言葉通り、名古屋にボールは持たれるも、ペナルティーエリア内には侵入させず、決定打は許さない。33分、シモビッチのポストプレーから古巣対戦に燃える永井龍に危ない場面こそ作られたが、永井のシュートは田中裕介がブロックした。すると、前半終了間際、カウンターからセレッソが立て続けに好機を作る。39分、関口訓充からリカルド サントスへ。42分には秋山がカットして持ち上がり、福満へ。いずれも決まってもおかしくないシーンだったが、シュートは2本とも、かつてセレッソにも在籍していたGK武田洋平に阻まれた。

後半も最初のチャンスはセレッソ。関口がドリブルから絶妙なパスを澤上竜二に送ると、澤上はドリブルから反転してシュート。ただし、惜しくもこのシュートはバーを越えた。ここからセレッソは名古屋の猛攻を耐える時間が続く。52分、シモビッチのクロスから青木亮太をフリーにさせるも、切り返してのシュートは酒本憲幸がブロック。60分には田口泰士と青木に左サイドを破られかけるも、藤本康太と茂庭が素早く帰陣。体を投げ出してカバーに入り、事なきを得た。66分にも、名古屋にショートカウンターを浴びると、玉田、青木とつながれ、最後はシモビッチにシュートを許すも、再び茂庭がブロック。セレッソにとっては、ジリジリと最終ラインが後退していく厳しい展開に。すると、ここで尹晶煥監督が動いた。澤上に代えて山口蛍を投入、このタイミングで木本恭生をDFラインに落とし、[5-4-1]へ移行した。80分には、その木本に代わって山村が3バックの一角へ入り、逃げ切る姿勢を明確にする。そして、85分。セレッソにとって待ちに待った瞬間が訪れた。J1リーグ第16節のベガルタ仙台戦以来、公式戦は約3ヶ月ぶりとなる清武弘嗣がピッチに投入された。試合前日。「こうやって戻ってくることができたのは自分の力だけではないし、監督を始め、スタッフ、選手、サポーターの皆さん、そういった人たちが自分をリハビリに専念できるようにやってくれたおかげ。これから恩返しできるようにやっていきたい」と話していた清武。試合後は、「ここからじゃないですか」と、まだまだこれからを強調していたが、シーズン終盤に向け、試合を決定付ける力がある清武の復帰は、何よりの朗報だ。89分には、その清武が酒本の裏へのパスに抜け出し、GK武田と交錯しかけ、こぼれたボールに福満が詰めたが、ここはわずかに枠を外れた。

試合は、最後までセレッソが名古屋に得点を許さず終了。終始、名古屋にボールは持たれるも、「一番危ないところだけはやられないようにしよう」(茂庭)という言葉通り、セレッソの選手たちはペナルティーエリア内での名古屋のシュートに対して戻りが早く、最後まで体を張った。リーグ戦で敗戦した直後の大事な一戦にカップ戦のメンバーを送り込んで勝利を手にした尹晶煥監督も、「お互いに助け合おうとするチームの一体感を見せた。自分のベストを尽くして戦うことができる選手たち」と賛辞を送る内容で、セレッソが天皇杯準々決勝進出を決めた。

監督コメント

「すごく大変な試合を勝ちました。僕らの選手たちは最後の最後まで足を止めることなく戦って勝ったと思います。ボールを握ることはあまりできなく、名古屋さんが保持する時間が長かったのですが、何回かのチャンスの中で得点ができました。少なかったチャンスをうまくモノにしたと言えますが、もっとボールを握りながら試合を運んでいかないといけなかったのですが、それはうまくできなかったので、残念に思います。いつも選手たちに話していますが、選手たちが慌ててしまうことがあります。ここまで足を運んで下さったサポーターの皆さんにいいプレゼントをしたと思いますが、リーグ戦に向けてつなげていけるように、いい準備をしたいと思います」

Q:今日、出場した選手たちの守備意識、戦う姿勢について。

「今日の試合に出たメンバーは、ルヴァンカップにずっと出場しています。ベテランの選手も多くいますけど、お互いに助け合おうとするチームの一体感を見せる選手たちだと思います。もちろん、足りないところもありますが、その部分もお互いにカバーし合って試合を進めています。無失点試合もすごく多いです。他の選手たちも、見ていて、こういう部分は見て学んで欲しいなと思います。自分のベストを尽くして戦う選手たちですし、もう一回、チャンスを与えたくなる選手たちだと思います」

Q:清武弘嗣選手が復帰して、公式戦に出ましたが、彼の今の状態は?

「皆さんがご覧になった通り、そこまでいいコンディションではないと思います。少しずつ出場時間を増やしていく必要がありますので、それで、この試合にも出場させました。本人が一番分かっているのではないのでしょうか」

Q:決勝点の福満 隆貴選手について。開幕からステップアップしているが、彼に対して要求してきたことは?

「練習で、サイドに配置してみて、トップ下にも配置してみましたけど、一番輝くポジションはシャドー、トップ下だと思いました。特別に何かを要求したわけではないですが、本人が最大の努力を発揮していると思います」

選手コメント

■福満隆貴
Q:早い時間帯に生まれた決勝点を振り返ると?
「立ち上がりにゴールを決めることができて良かったと思いますし、失点もしなかったので、良かったです」

Q:相手DFの裏を狙うことは、チームとして試合前から狙っていた?
「そうですね。名古屋さんのスタイルなので、相手にボールを持たれることは予想していました。集中力を切らさず、奪った後がチャンスだと思っていたので、奪った後に得点につなげるプレーができて良かったと思います。でも、2点、3点と取れるチャンスもあったので。そこは決め切らないといけない。最後は押し込まれて厳しかったので、そこは次につなげていきたいです」

Q:リカルド サントス選手にボールが入った瞬間、パスが出て来ると信じていた?
「そうですね。リカが前を向いた瞬間、スペースがありましたし、信じて走ったらいいボールをくれたので、決めるだけでした」

Q:天皇杯という1発勝負の大会でも、カップ戦のメンバーを使ってもらって、粋に感じる部分もあった?
「そうですね。負けたら終わりというトーナメントで使ってもらい、しっかり結果で恩返ししないといけないと思っていました。僕だけではなく、ルヴァンカップに出ている選手たちの気持ちは強いと思いますし、今日はその部分も出ていたと思うので、これを続けていきたいです。1戦、1戦、勝ちだけを目指して戦っているので、すごくいい雰囲気だと思います」

Q:長い時間、相手に押し込まれながらも無失点で終えたことについて。
「チーム全員で守っていますし、チーム全員で攻めています。(後ろの選手たちに対する)安心感はありますし、失点しない雰囲気もあると思うので、チームは一つになっていると、やりながら感じています。失点ゼロをもっと続けていけるように、これからもやっていきたいと思います」

■リカルド サントス
Q:チームに勇気を与えた先制点だった思うが、あのゴールを振り返ると?
「(秋山)大地からボールが来て、トラップした瞬間、(福満)隆貴が走っているのが見えた。そこに通すことができて、いいフィニッシュをしてくれました。でも、相手はポゼッションやパスがうまくて、きつい試合でした。それでも、ゴールを決めて勝ったのは自分たちなので、それに関してはうれしいですね」

Q:耐える時間が長い中でも無失点に抑えた。守備陣への信頼感はある?
「モニさん(茂庭照幸)にしても、(藤本)康太、(田中)裕介、シャケ(酒本憲幸)にしても、みんな経験豊富な選手たち。信頼はすごくしています。もちろん、僕たちも手伝って、守備に貢献しとうと思っています。きつかったですけど、やることをやって、耐えることができました。そうやって勝って帰れることは最高ですね(笑)」

Q:相手の攻撃の中心には、昨季までポジションを争っていた玉田圭司選手がいましたが?
「今日、彼のプレーを見ることができてすごくうれしかった。試合前にも少し話ができました。相手で一番良かった選手じゃないですか。でも、ゴールを割られなかったので、良かったと思います(笑)」

■木本恭生
「守り抜けたことは自信になりますし、モニさん(茂庭照幸)と(藤本)康太さんの存在は大きい。最終ラインからの声など、目には見えないところでの貢献がすごい。自分たちがやり易くなるので、そこはものすごく大きいと思います」

Q:この無失点での勝利を、中2日で行われるリーグ戦にもつなげていきたい?
「そうですね。それは試合前にもみんなで言っていました。リーグ戦で前節に負けたので、もう一回、自分たちで勝って、勢いをつけようと話していました。今日の勝ちでロッカールームの雰囲気もすごく良かったので、次のリーグ戦のメンバーもやってくれると思います」

■茂庭照幸
Q:完封勝利という素晴らしい結果になりました。
「そうですね。(カップ戦のメンバーは)いつも格上とばかり戦っていました。今回も相手はいいメンバーだったし、カテゴリーに関係なく、今日も格上だと思って戦いました。僕らはルヴァンカップでもそういう相手は多かったし、似たような図式の中で勝ち上がって来た自信もあったので。今日も試合前に、『たくさん肉は切らそう、でも骨は断とう』と話していたので、まさにその通りになりました」

Q:先制するのが早く、守る時間も長くなったが?
「いや、でも、あの時間に入らなくても、試合展開はあのままだったと思います。ただ、こちらに鋭いカウンターが何回かあったので、そこでもう1点決めることができればもっと楽になったと思うし、違う展開になったのかなと思います。相手も最初から最後までスタイルを変えずにやってきたのできついことはきつかったけど、一番危ないところだけはやられないようにしよう、ペナルティーエリアの中では仕事をさせないことをチームとして徹底しました。そうやってルヴァンカップもやってきたので、そこは自信を持ってやりました」

Q:相手の攻撃の中心には、玉田圭司選手がいましたが?
「やっぱりスーパーだなと思いますよ。ミスもほとんどなく。ただ、うまいのは知っているので。日本中、玉田と言えばうまい、というのは誰でも知っているから。フィニッシャーにさせるのだけはやめよう、という話をしました。チャンスメイクはいいけど、あの人がペナルティーエリアの中にいる時は仕事をさせないようにしようとみんなで意識していました」

■山口蛍
Q:天皇杯3回戦のアルビレックス新潟戦に続き、この試合にも出場しました。カップ戦のメンバーの良さを感じる部分もありますか?
「そうですね。みんな、しっかり戦えるし、走れるし、またこっちに来て違う雰囲気も味わえるので、それは自分たちにも刺激になります。それ(相乗効果)はチームにとって、すごくいいことだと思います」

■清武弘嗣
Q:リーグ戦の第16節・ベガルタ仙台戦以来の復帰戦となったが?
「ここからじゃないですか。もっと試合をこなして、いい状態で入れればいいと思います。今はチームの調子もいいので、自分がやれることをちょっとずつやれればいいかなと思います。今日は5分くらいでしたけど、出ることができて良かったです。天皇杯は、次はベスト8ですけど、また次、すぐにリーグ戦があるので、そこでもチームとしてしっかり勝っていきたいと思います」