天皇杯 JFA 第104回 全日本サッカー選手権大会3回戦

2024.7.10

セレッソ大阪

渡邉 りょう (54')

1

OTHER

FULL TIME

2

0-0

1-1

0-0

0-1

ヴァンフォーレ甲府

ピーター ウタカ (46')

鳥海 芳樹 (112')

JIT リサイクルインク スタジアム

5,038

ギャラリー

MATCH REVIEW

延長戦の末、前々回大会王者に屈する。今季の天皇杯は3回戦で敗退


直近のリーグ戦、東京ヴェルディとの明治安田J1リーグ第22節から中3日。舞台を天皇杯に移し、セレッソ大阪はヴァンフォーレ甲府との天皇杯3回戦に臨んだ。先発は東京V戦から8人を入れ替え。東京V戦は体調不良でメンバー外となった奥田勇斗も戻り、香川真司やジョルディ クルークスらここ数試合、公式戦出場から離れていた選手も名を連ねた。

立ち上がりは甲府の攻勢をしのぐ展開に。5分に舩木翔が警告を受けるなど落ち着かない入りとなったセレッソだが、10分過ぎからボールを握り、自分たちの時間を作ると、為田大貴、柴山昌也、クルークスが両サイドからクロスでゴールに迫る。ただし、決定的な形は作れずにいると、24分、26分と自陣左サイドから仕掛けられ、ピンチも迎えたが、ここはCBとGKが体を張って防いだ。前半セレッソの最大のチャンスは35分。この試合、1トップで先発した渡邉りょうのプレスバックからボールを奪うと、香川のサイドチェンジを受けたクルークス、そして最後は奥田のクロスに渡邉がヘディングで合わせたが、決定的な形も枠を捉えることはできなかった。0-0で迎えた後半開始早々、46分に失点。自陣左サイドでボールを失うと、ピーター ウタカに抜け出され、ドリブルで運ばれ、決められた。試合前、「(甲府には)1人、2人でゴールを奪える選手がいる。カウンターをどう防ぐかはポイントになる」と指揮官も警戒していた形でやられてしまった。53分にも、ウタカのスルーパスから決定機を作られたが、この場面ではGKヤン ハンビンがビッグセーブで2失点目は許さない。すると守護神の活躍に攻撃陣が応える。1分後の54分、相手のミスを突き、渡邉が遠めの位置から右足を一閃。目の覚めるミドルシュートを叩き込み、同点に追い付いた。ここが勝負所と見た小菊監督は61分に3枚替え。レオ セアラ、ルーカス フェルナンデス、カピシャーバを同時投入し、試合を決めにかかる。すると70分、再び相手のパスミスからセレッソに決定機。バックパスがズレたところを拾ったセアラがGKとの1対1に持ち込んだが、シュートはわずかに枠を外れた。その後は73分、79分、80分と甲府に立て続けに決定機を作られるも、DF陣も懸命に体を寄せて失点は阻止。試合は1-1で90分を終え、延長戦に突入した。

延長前半は開始から甲府にボールを握られ守勢に回る。96分、100分と連続してピンチを迎えたが、ここでもDF陣が何とかシュートブロック。延長前半のラスト5分はセレッソがボールを握り返して押し込んだが、5バックで固める甲府の守備を崩せずシュートは打てない。互いに疲労の色も濃くなった延長後半、先に仕掛けたのはセレッソ。109分、フェルナンデスが右サイドを突破し、深い位置まで進入。相手DFのタックルを受けたが、ボールに行っていると判断され、笛はならず。すると112分、甲府の途中出場選手、鳥海芳樹とファビアン ゴンザレスのコンビで崩され失点。ここまで耐えていたDF陣だったが、ついにゴールを割られた。このシーンの後、太もも裏を抑える仕草をしていた西尾だが、交代枠を使い切っており、ピッチを下がらず前線に上がってパワープレーを仕掛ける。最後までクロスやセットプレーで同点を目指したセレッソだったが、追い付くことはできず、1-2で試合は終了。今季の天皇杯は3回戦で敗退となった。

「結果が示す通り(の試合)だったと思います。耐え切れず、逆に自分たちは決め切れなかった」と試合を振り返った渡邉。内容的にも甲府に上回られた現実に、「向き合うしかないですし、受け止めないといけない。この試合をなかったことにするのではなく、『この試合があったから、変わった』と、この先、言えるように結果で示していくしかない」と西尾も唇を噛みしめつつ決意を示した。2つのカップ戦で敗退し、今シーズン残された大会はリーグ戦のみ。「ここから16試合、1試合1試合を自分たちの目標のために戦いたい。まだまだ目標が達成できる順位だと思っているので、全員でブレることなくやっていきたい」と小菊監督も顔を上げた。中3日で控える明治安田J1リーグ第23節・川崎フロンターレ戦へ向け、まずは心身を回復させ、一戦必勝の精神で臨みたい。

監督コメント

■小菊 昭雄監督

「今日の試合は1発勝負という危険な試合で、甲府は2年前にこの大会を優勝しているチームで、ACLの決勝トーナメントにも進出した素晴らしいチームということで、最大限のリスペクトで臨みました。監督も代わられて、非常に団結力の高い、強度の高い、素晴らしいチームだったと思います。私たちも残念ながら様々なアクシデントがあり、力尽きてしまったのですが、今シーズン残りのリーグ戦16試合、1試合1試合を自分たちの目標のために、今日の試合を生かしていきたいです。まだまだ目標が達成できる順位だと思っていますので、次の川崎フロンターレ戦に向けて、全員でブレることなくやっていきたいと思います」

Q:結果もそうですが、決定機の数、トータルの内容面でも甲府が上回ったように思います。勝利を掴めなかった要因をどう考えますか?
「甲府が素晴らしいサッカーをしたと思いますし、私たちの力のなさを痛感した試合にもなりました。普段からしっかりと準備をしている選手たちで、多くの選手を起用したかったので、そこ(直近のリーグ戦から大幅に先発を変えたこと)に対しての悔いはないです。精一杯、パフォーマンスを発揮してくれたと思います。ただ、リーグ戦を戦っているメンバーとの連係やコンディションは、実際の公式戦から離れている選手も多数いましたので、湿気、アウェイ、連戦、色んな条件が重なって、今日は全体的にパフォーマンスが上がらない選手が複数いたことも確かだと思います。ここから目標であるリーグ優勝を目指す上で、ケガやコンディション不良、警告累積も含めて色んなアクシデントも出てくると思いますので、そこも含めて全体で乗り越えていかないといけません。ただ、今日の試合で素晴らしいパフォーマンスを見せて、リーグ戦でも十分先発で出られる選手もいましたし、今日18人に入らなかった選手も、舞洲のトレーニングでの強度は上がっています。そうした選手たちと競争しながら、また全員でリーグ戦に向かっていきたいです」

Q:負傷交代したとみられる渡邉選手、失点時に足を痛めて終盤は前線に上がっていた西尾選手の現状について
「(渡邉)りょうも(西尾)隆矢もメディカルスタッフからまだ報告は入っていないので、詳しい状況は分かりません。他にも少しケガ人が出たことは残念です」

選手コメント

■渡邉 りょう選手

Q:1-2という敗戦をどう受け止めていますか?
「結果が示す通りだったと思います。耐え切れず、逆に自分たちは決め切れず、相手に軍配が上がったのかなと思います。なかなか自分たちがやろうとしたサッカーを体現できなかったですし、プレーのクオリティーももっと改善していける部分もありました。天皇杯が終わったことを一人一人がしっかり受け止めて、次に進まないといけない。自分自身、しっかり次の川崎フロンターレ戦に向けて準備したいと思います。次はサポーターの皆さんに笑顔になってもらって、帰ってもらえるよう、勝利を届けたいです」

Q:失点後、すぐに決めた自身の得点を振り返ると?
「相手のミスから奪って、得点につなげることができました。前半はなかなかそういう形から攻撃に転じることができなかったのですが、みんなで声を掛け合ってやり続けたことが、結果として後半に僕のゴールにつながりました。チーム全員が守備をやり続けたからこそ生まれた得点だと思います。ただ、1点では勝てないので、2点、3点と、自分自身もそうですし、チームとしても取っていかないといけない。どう追加点を取るかがチームとしても今の課題なので。質なのか、回数なのか、メンタルの問題なのか、色んな選手とコミュニケーションを取っていかないといけない。そこは勝とうが負けようが、ずっと追求していくべきだと思います。『日常が全て』と監督も常に仰っていますが、そこを改めて見つめ直さないといけません。(直近のリーグ戦)東京ヴェルディ戦もそうですが、同点をどう勝ちに持っていけるかが、優勝するチームの強さだと思う。その強さが今の僕たちにあるかと言えば、正直ないと思います。もちろん、みんな得点を取るためにやっているので、そこをどう結果に結びつけていくか。過程も結果も両方を求めながら、1試合1試合を大事に戦って、成長し続けていきたいと思います」

■柴山 昌也選手

Q:ゴールをこじ開ける部分で難しさがあった試合だと思うが、振り返ると?
「甲府は中央を固めていた中で、自分の仕事はそこをこじ開けること。今日は特に狭いスペースでしたが、そこでボールを出し入れして前を向くことはできていたので、そこからのラストパスとゴールは、さらに上に行くためには突き詰めていかないといけないところだと改めて感じました」

Q:ボールを受けて仕掛けるプレーは表現できているだけに、得点に直結するプレーが乗り越えるべき壁になっている印象です。
「そうですね。ここ数試合、出場時間も伸びて、トップ下をやらせてもらう機会も増えているだけに、結果を出さないといけない。特長を出せていることは自分でも感じますけど、チームが優勝争いするために、自分がもっと上のステージに行くには、アシストや得点を伸ばしていかないといけません」

Q:ここからはリーグ1本になったが、改めてリーグ戦に向けて
「リーグ優勝の可能性がなくなったわけではないですし、そこに懸けるしかない。残り16試合、目の前の1試合1試合を全員で勝点3だけを考えて積み上げていきたい。悔しい敗退になりましたが、心身ともに回復して、次のアウェイの川崎戦に勝利して、またヨドコウ桜スタジアムに帰ってきたいと思います」

■奥田 勇斗選手

Q:まず戻ってきて一安心です。前節は「高熱が出た」と監督も話されていました。
「体調を崩して、3日間ほど高熱が出ました。そこは自己管理不足です。治って、2日調整して、今日に臨みました。すぐに起用してくれたことは、チームとして必要とされていると感じたので、それを結果につなげることができなくて悔しいです」

Q:全体的に難しい試合になった印象だが?
「自分自身も4日休んだ分、体力もそうですし、守備の強度、ボール慣れにも苦戦しました。ただ、考えながらプレーして、周りもサポートしてくれたおかげで、徐々に取り戻していけました。負けてしまったことは凄く残念ですが、この試合を経て、次のリーグ戦に向けてコンディションは上がりました。そこはポジティブに考えています。次の川崎フロンターレ戦に全員で勝利したいです」

Q:試合後、ゴール裏やロッカーでの様子などは?
「サポーターの皆さんは最後まで応援して下さって、僕たちも勝つためにプレーしました。ただ、ファン・サポーターの皆さんには、結果でしか恩返しできないので、もう一回、引き締めて、次の試合で勝利を届けたいです。ロッカーでは、気を落としたり、悔しがっている選手もたくさんいましたが、目標のリーグ優勝に向けて落ち込んでいる場合ではありません。中3日ですぐ試合は来ますし、そこに向けて全体で前向きに取り組む姿勢が大事だと思います」

■西尾 隆矢選手

Q:延長戦での失点後、太もも裏を痛めている様子も見られたが、そこから前線へ上がっていきました。ピッチから出る選択肢もあったと思いますが、大丈夫ですか?五輪も控えているだけに、心配です。
「何とかなります。大丈夫です。今、100%以上で頑張れない人間が、五輪で活躍はできません。痛いからプレーを止めるとか、自分のポリシーには一切ありません」

Q:結果を振り返ると?
「正直、難しいゲームになるとは思っていました。実際、対策されて、割り切ったサッカーを相手にされましたし、ボールをつなぐところはつないできた。やり辛さはありました。入りも、上手くいっていない感じはありました。歯痒いというか、悔しいというか。ここまで悔しい試合はなかなかないぐらい。J1のチームとして勝たないといけないですし、チームを勝たせられなかった自分に対する不甲斐なさも感じています」

Q:内容的にも相手に上回られただけに、より反省も強く残った試合になったのでは?
「最初の失点も自分たちのミスから。DFラインのミスでもありますし、誰か個人というよりチーム全体の失点としても向き合って、反省しないといけません。切り替えることも大事ですが、軽く考えてはいけない。綻びが出ると簡単に失点してしまいますし、攻撃でも、チャンスは作っても得点できないことは、リーグ戦から続いています。なぁなぁにするのではなく、意識の部分を一人一人が一段階でも上げていけば、チーム全体も必ず変わっていきます。今は凄く大事な時期。ここで下がっていくのはもったいない。踏ん張り時です。リーグ戦は(直近は)負けていないので、そこはポジティブに捉えて前を向いていきたいです」

Q:克服すべき課題が詰まった試合になった分、改善していくべきことも見えたのでは?
「向き合うしかないですし、現実を受け止めないといけない。この試合をなかったことにするのではなく、『この試合があったから、変わった』と、この先、言えるように結果で示していくしかない。連戦で次節まで短い時間ですが、全員でコミュニケーションを取って、変わっていかないといけないと思います」

Q:清武選手が期限付き移籍してチームを離れた分も、今後はクラブ全体も含めて、西尾選手のリーダーシップに期待が懸かります。
「キヨくん(清武)はセレッソのレジェンドという存在ですし、移籍に関して、自分も色んなことを思いました。こうして時代は変わっていくのかなと、そういう時期なのかなと実感しました。キヨくんとは、本当に長い間、色んな話をさせてもらいました。一人の人間としても、選手としても、凄く成長させてもらいました。まだまだ学ぶことはたくさんありましたし、それはキヨくん本人にも伝えていましたが、『隆矢なら大丈夫』とも言って下さいました。これからは、年齢に関係なく、自分がセレッソを引っ張っていけるように、支えていけるように。プレーもそうですし、人間として、西尾隆矢としても信頼されて、みんなから愛される選手にならないといけないと感じています」