■試合データ(選手・監督コメント/スタッツ)
https://www.cerezo.jp/matches/2022-08-10/
川崎フロンターレとのJリーグYBCルヴァンカップ準々決勝・第2戦に挑んだセレッソ大阪。真夏の公式戦5連戦の4試合目であり、直近のリーグ戦から中3日とあって、チームの総合力、底力が問われた一戦は、ラストプレーで劇的な結末。第1戦に続き引き分けで終わった第2戦だが、セレッソがアウェイゴール数の差で準決勝進出を決めた。
ホームでの第1戦を1-1で終えたセレッソは、勝利するか、2点以上を取っての引き分けで突破が決まる条件で第2戦を迎えた。序盤は川崎にボールを握られ、苦しい展開が続く。ただし、ゴール中央を割らせずしのぐと、10分過ぎからセレッソもサイドを起点に相手ゴールへ迫り出す。すると30分、この試合、両チームを通じて最初の決定機がセレッソに訪れた。山中亮輔の鋭いクロスが右へ流れると、逆サイドでフリーで受けた松田陸がトラップからシュート。GKにはじかれたボールを拾った奥埜博亮が横へ流すと、為田大貴が狙い澄ましてシュート。ただし、ここはクロスバーに嫌われ、ゴールならず。先制のチャンスを逃したセレッソは、40分に失点。この試合、初めて川崎に中央を破られ、最後はレアンドロ ダミアンのシュートを西尾隆矢がクリアしたボールをマルシーニョに押し込まれた。
内容としては五分に近い展開ながら、1点のビハインドを負って迎えた後半。セレッソは開始からアダム タガートに代わって加藤陸次樹がピッチに入る。1点を返すべく前への意識を強めたセレッソだが、その裏返しで再三カウンターを食らうと、53分、マルシーニョにこの試合、2点目を献上し、リードを広げられた。61分には3枚同時交代で山田寛人、ジェアン パトリッキ、北野颯太を投入した高橋大輔コーチは、早くも68分に5枚目の交代として中原輝を送り、交代枠をすべて使い切る。鈴木徳真をワンボランチに、攻撃の枚数を増やして攻め込むセレッソだが、川崎の守備を崩すには至らない。81分、84分と加藤が連続してシュートを放つも、「プレーの余裕がなくて、シュートも無理やりな感じで狙い過ぎてしまった」とミートするには至らない。
3失点目こそ防いだが、時計の針は刻一刻と進み、後半もアディショナルタイムに突入しかけた90分。セレッソが息を吹き返す1点を返す。中原、西尾、鳥海晃司と冷静にパスをつなぎ、鳥海が左サイドの山中へ展開すると、フリーで受けた山中が狙い澄ましたクロスをニアへ入れる。ここへ飛び込んだのが加藤。「ニアへくることを予測して、相手の前に入って、うまく合わせることができた」と相手DFの前でボールを触り、頭でネットにねじ込んだ。
この1点により、スタジアムの空気も一変。あと1点でアウェイゴールの差で勝ち抜けが決まるセレッソと、敗退に追い込まれる川崎。互いの心理状況も影響してか、“何かが起こりそうな”気配が漂う。CKにはGKキム ジンヒョンも上がるなど、セレッソが同点への執念を見せると、ラストワンプレーで奇跡は起きた。
松田陸のクロスに、前線へ上がっていた西尾が競り、こぼれたボールをジェアン パトリッキが中へ折り返す。そこへ、こちらも前線へ上がっていた鳥海が飛び込むと、こぼれたボールに加藤が体を投げ出してマイボールにする。ここから中原の精度の高い左足でのクロスに対し、ファーサイドから執念で折り返したのは西尾。フワリと上がったクロスに、最後は誰よりも早く反応した山田が頭で押し込んだ。
この得点が決まった瞬間、ピッチ上の選手たち、ベンチで見守っていた選手、スタッフ、そしてスタジアムの一角をピンクで染めたサポーターに歓喜の輪が広がり、言葉にならない叫び声がこだました。ゴール直後に試合は終了。最後まで誰一人諦めることなくつないだボール、それを押し込んだ山田は、「このゴールを優勝につなげていきたい」とキッパリ語った。17年以来の優勝へ向け、劇的な勝ち上がりでセレッソが準決勝進出を決めた。